【取材】特効薬はない、中長期で地道な積み重ねを/朝日生命保険相互会社

ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みや専門家の取材をしています。

今回は、ウーマンエンパワーアワード2022で最終ノミネートされた朝日生命保険相互会社に、ダイバーシティ&インクルージョンや女性活躍推進の取り組みを伺いました。

<企業概要>朝日生命保険相互会社(東京都新宿区)

創立:1888年 

従業員数:職員:4,104名、営業職員:14,241名

事業内容:生命保険業

売上高:3,871億円(保険料等収入:2021年4月~2022年3月)


【事務局・谷平】(以下、事務局)中長期でポジティブ・アクション、および働き方改革に取り組まれているということですが、取り組みの変遷について教えてください。

A. 【朝日生命保険相互会社・本田氏】(以下、本田)

当社は、2006年度よりスタートした「朝日生命ポジティブ・アクション」を通じて、「女性のキャリア開発」「仕事と家庭の両立支援」等に取組んできました。 同時に、社長を委員長とする「女性の活躍推進委員会」を設置し、委員には女性の社外取締役が参画しています。加えて、各職場で活躍している従業員も参加し、〈リーダー登用促進〉〈職務領域の拡大〉〈働く環境整備〉〈採用拡大〉に向けた取組みについて議論を重ね、職員教育の充実や働く環境整備の対応策等を提言しています。

【事務局】着実に中長期で取り組まれているわけですね。スタートから6期目ですが課題は何でしょうか?

A.【本田】

この様な取組みを行ってきたことで、取組み開始前の2005年に4%だった女性リーダー比率(部下を持つ職位以上の者またはそれと同等の職位にあるもの)は2022年度始31%まで増加しました。 第6期(2021年~2023年)である現在の課題としては、上級管理職に女性がまだ少ないことが挙げられます。部長や支社長なども増えてきてはおりますが、さらに意思決定の場での女性の割合を増やしていくことを企図し『「朝日生命の新たな活力を生み出す女性のエンパワーメント向上!!」 ~自ら目標を定め挑戦・行動を起こし、キャリアを切り拓くステージ~』をスローガンに掲げ、取り組みを推進しています。

【事務局】育休や休暇制度のほか、働く環境の整備をしてきたことで、女性の管理職数は連動して増えているのでしょうか?

A.【本田】

そうですね。このように様々な環境を整備してきたことで、女性の働き方にも選択肢が広がってきており、リーダー職へのチャレンジは確実にしやすくなってきたと思っています。リーダー職を目指そうとする女性は男性より少ない傾向にあるので、まだサポートは必要だと考えています。

現在の管理職を担う世代の女性の多くは、与えられた職務をこなしていくことが重要であった中で、上位職や新たなことへのチャレンジを推進していくという新しい時代の方針に戸惑う方もいますが、若い世代では、抵抗は少ないように感じています。

また、男性の育児休職の取得推進にも取り組んでおり、5年連続(2017年~2021年)で取得率100%となっています。育児休職を取得することはもちろんですが、取得日数については現在、平均で7~8日程度とまだ少ないので、より長く取得できるように取り組んでいきたいですね。今年度、育児・介護休業法が改正されたことを機会に、さらに取得推進に取り組んでいきたいと考えています。

【事務局】女性活躍やダイバーシティを進める上では、社内で色々なご意見があったのでしょうか?

A.【本田】

全従業員に行っている意識調査では、「女性の活躍がなければ社会で認められなくなる」など前向きな意見が増えてきており、「女性、従業員の多くを占める女性の教育・引き上げなどが会社にとって重要だというコンセンサスはとれていると感じています。

社長がトップの委員会で女性活躍の重要性を伝えることや、委員会ではテーマを決めて全国の各職場で活躍しているメンバーと課題や解決策を議論していくなかで少しずつ進んできました。 一つの取組みだけに特別な効果があったということではなく、地道に意識改革と環境改善の取組みを積み重ねてきた結果であり、今後も継続していくことが重要だと考えています。

【事務局】上司の評価と連動されていることも重要ですね。

A.【本田】

2018年度に社長を委員長とする働き方改革推進委員会を立ち上げ、「イキイキと働く。そして成長する。」をスローガンに、働き方改革の取組みをスタートさせました。

時間を意識した業務遂行に向け、生産性の進捗を測るKPIとして「生産価値指標」と「労働時間指標」を一元管理する「生産性指標」を2020年度より導入しています。初年度は「生産性指標」を所属長(部長・支社長)評価に取り入れ、2021年度は評価対象を営業所長まで拡大(営業所長評価および営業所表彰規程へ導入)しました。

併せて、所属毎に設定した「生産性指標」を達成した所属員全員を褒賞する「働き方改革推進表彰(KPI部門)」制度を2020年度から展開しています。

また、1on1ミーティングの全社展開や、本社へのフレックスタイム制度の導入、テレワークやサテライトオフィスの拡充等の働く環境の整備、育児・介護と仕事を両立するための支援策の拡充等、従業員満足度の向上にむけた諸対策を実施しています。

【事務局】女性活躍やダイバーシティの推進において、御社はトップダウン×評価連動×計画的な施策とタイミング、という形が功を奏したのかなとお見受けしました。

A.【本田】

そうですね、トップダウンで会社としての姿勢を見せてきたことは効果があったと思っています。

【事務局】他の企業でも進めやすい取り組み方はありそうですか?

A.【本田】

それぞれの組織によって環境等も違っているかと思いますので、その組織の状況に合わせて目標を定め、その目標に向かって会社全体で取り組んでいくことが大切だと思います。

女性活躍推進法など、情報開示義務等もありますので、その項目の中で目標設定し取り組んでいくというのも良いのではないでしょうか。

朝日生命保険相互会社 人事部  ダイバーシティ推進課長 本田 薫恵
プロフィール
神戸支社に専任職として入社。支社・営業所において様々な職務(事務)を経験。

その後、神戸にてオフィスリーダー、総務部長を経て、2020年4月、本社人事部へ異動となり現職。女性の活躍推進やダイバーシティ推進等を担当。

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