【取材】”業務範囲の視える化”で未知への不安を払拭、「性別」ではなく「組織というOSの最適化」が結果として女性活躍推進へ繋がる/フロンティア株式会社

ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みや専門家の取材をしています。

今回は、ウーマンエンパワーアワード2022で最終ノミネートされたフロンティア(株)に、ダイバーシティ&インクルージョンや女性活躍推進の取り組みを伺いました。

<企業概要>フロンティア株式会社(東京都渋谷区)

設立:2009年  従業員数: 168名(2022年10月時点)

事業内容:ビジネスマッチングサービス「Ready Crew(レディクル)」の運営

【事務局・谷平】(以下、事務局)御社は企業と企業をつなぐビジネスマッチングサービス「Ready Crew(レディクル)」の展開を行っているとのことですがどういったサービスなんでしょうか?

A.  【フロンティア(株)・高瀬氏】(以下、高瀬)

発注先を探している企業と、発注元を探している企業をマッチングさせるサービスで、これまでのサービス利用数は40,000以上、上場企業の60%にご利用いただいております。

コンシェルジュが施策に関してお悩みを持つ企業にヒアリングを行い、費用や納期などの条件から担当者の相性まで考慮し幅広いネットワークの中から最適な企業をご紹介します。

マッチングした際に登録企業から一律の成果報酬をいただいているため、発注元は無料でサービスを利用いただける仕組みです。

コロナ禍を機に、何かを変えていかなくてはいけないという風潮も後押しし、ビジネスマッチングのニーズが高まった印象ですね。

【事務局】社員の70%、管理職の半数が女性ということですが、女性が活躍しているのには理由があるのでしょうか?

A.【高瀬】

コンシェルジュの仕事は対面でお客様のニーズをヒアリングすることが主ですので、女性の傾聴力や対話力、細かい気配りなどできる点がお客様からご評価いただけているのかと思います。特に、仕事において性別は関係ないという考えですが、組織の最適化を目指していく中で、女性活躍推進が一つの手段であると考え、この1年半ほどで女性の採用拡大とキャリアパスの拡充には力を入れてきました。カスタマーサクセス、インサイドセールス、品質管理、広報、マーケティングなど営業以外の新設部門も設立し、個人の適性や事情に合わせてキャリアの選択肢を増やしてきました。

【事務局】SDGsにも力を入れているとのことですが、具体的にはどういった取り組みをされているのでしょうか?

A.【高瀬】

当社では、企業としての取り組みはもちろん社員に対する福利厚生を通じてもSDGsの目標項目に取り組んでおります。具体的には、ジェンダー平等を実現するための「シングルマザー・ファザー応援制度」や「時短勤務制度」。身なりを整えることで仕事へのモチベーションアップや働きがいにもつながる「ネイル手当」。環境による格差をなくすための「奨学金補助制度」の導入などが挙げられます。

【事務局】奨学金の負担やネイル代の補助など、社員にとってはありがたいですね。

A.【高瀬】

「レディくる」に関しては、企業間の「情報格差をなくす」というビジョンの元、サービスを運営しておりますが、社内に関しては「環境による格差をなくしたい」という想いがあります。家庭環境など自分では選べない要因によって引き起こされる格差をなくしたいという背景から「奨学金補助制度」が生まれました。

福利厚生の中でも特に好評の「ネイル手当」は、女性社員の8割が利用しており、今年で11年目を迎える国内でも珍しい福利厚生となっております。ネイル手当が導入された背景には、「社外の人と接するにあたり、ビジネスマナー・身だしなみに繋がるサポートを用意したかった」という想いがあります。

【事務局】社員の「働きがい」のために何か取り組まれていることはあるのでしょうか。

A.【高瀬】

年末に行う総会での表彰や、部署を横断したランチ会の実施、提案してくれた企画が良ければ買い取る企画買取制度や自分で目標を掲げるコミットメント制度を設けております。 また、お互いに感謝を伝えることができる社内賞賛ツールの導入や、社員が自ら持ち回りで業界分析や業務のtipsを共有する勉強会も実施しており、これらの取り組みが評価され2022年版「はたらきがいのある会社」に認定されました。

【事務局】女性の管理職登用において重要なポイントは何でしょうか?

A.【高瀬】

一番は「未知のものに対する不安」を払しょくしてあげることだと思います。管理職というと「大変そう」というイメージが先行し、壁になりがちです。そこでまず、”業務範囲の視える化”を行いました。ここからここまでの仕事を行うのが部長、というように業務範囲を明確にし可視化することで、責任へのストレスを軽減し、不安要素を取り除いています。

また、女性の管理職登用や仕事に限った話ではありませんが、何事も目的に対して課題を正しく抽出できる環境やスキームが重要と考えております。課題設定が違ってしまえば、そこから導かれる解も違ってしまうからです。

【事務局】女性社員の定着や成果を求める上で、中小企業でも取り組みやすいと感じる施策はありますか?

A.【高瀬】

前提として、「最適解は組織によって異なる」という風に考えます。それは組織によって文化や構成する人材が異なるからです。

料理に例えていうなれば、食材が違えばその素材を活かす味付けや調理法は違ってくるようなものです。

その他、大手企業ではマネジメントや教育などある程度のマニュアルが整備されていることが多いですが、中小企業ではそうでないケースが多い印象もあるのでそういったことも、大手をまねてやってみたけどうまくいかないケースなのかなと思います。

組織を構成する人材や文化に左右されない、最大公約数的な要素は念頭にいれつつ、その時の文化や社会的背景、人材を見ながら、各会社にあった方法や環境を運用と改修を重ねながら試行錯誤していくことが、一番効果的なのではないのかなと思います。

当社では定量、定性調査の両面から課題を抽出しております。組織の健康診断のようなものですね。定量調査の一環としてはモチベーションや働く環境についての悩みなどをヒアリングしております。定性的にはより各個人の健康やKPIに対する進捗をヒアリングし、現状を正しく理解することを心がけております。

すると、今までは見えていなかった問題の根本的な原因が見え、課題解決につなげることができました。

【事務局】働く社員に対して大切にしているメッセージングはありますか?

A.【高瀬】

「キャリアパスは自分でつくるものである」という話はよく社員にしています。キャリアは会社から与えられるものではなく、振り返ったときにその人が歩んできた道でしかないので、主体的に自分でチャンスをつかみに来てほしいと思っています。会社としての使命は、「選択肢」をもてるようにしてあげることだと思うので、社員それぞれのやりたいことに対して後押しできる存在でありたいです。

【事務局】最後に、女性活躍推進や働き方改革について模索している企業の皆さんにメッセージをお願いします。

A.【高瀬】

繰り返しになりますが、企業の最適解は、組織を構成するメンバーはもちろん、社会背景によっても変化するものです。他所の最適解が必ずしも自分たちの最適解ではないですし、セオリーはあれどいつもその通りにいかないのが組織の難しさでもあり、面白さでもあります。

「女性活躍推進」に関しては性別という概念に縛られにいくのではなく、組織というOSの最適化を模索する視点をもつことが重要なのではないでしょうか。

全員が常に「自分たちで最適を模索しよう」というマインドをもつことが根底に必要だと思うので、そのための環境を整備し続けたいと思っております。

高瀬氏 プロフィール
取締役兼広報・マーケティング部部長
大学院博士課程で医療系の研究を専攻後、広告代理店でストラテジックプランナーを経験。
新規事業の立ち上げのため、マーケティングとしてITメガベンチャーへ入社。
保険、証券事業の立ち上げを経験し、2021年フロンティア株式会社へ入社。
執行役員 兼 広報マーケティング部長を経て、2022年10月より現職に就任。             
                                

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