ウーマンエンパワー協会では、さまざまな企業の取り組みや専門家の取材をしています。
今回は、ウーマンエンパワーアワード2022で最終ノミネートされた(株)ノバレーゼに、ダイバーシティ&インクルージョンや女性活躍推進の取り組みを伺いました。
<企業概要>株式会社ノバレーゼ(東京都中央区)
創立:2000年
従業員数: 単体1,670名(2021年12月末時点)うち社員約700名
平均年齢:33.2歳
事業内容:ブライダル事業 (婚礼プロデュース部門・婚礼衣裳部門・レストラン部門)

【事務局・谷平】(以下、事務局)まず、女性の働き方やキャリア支援という側面での御社の取り組みについて教えてください。
A. 【(株)ノバレーゼ・小高氏】(以下、小高)
弊社では、育児短時間勤務制度として働き方を通常1日8時間のところ、5時間、6時間、7時間の中から選ぶことができ、お休み日数も月通常9日のところ最大14日まで選ぶことが可能です。
育児短時間勤務制度と同様に勤務時間やお休み日数を選べる「フレックスキャリア」と称した制度もあり、こちらは子育て中でない方、例えば結婚や親の介護で仕事をセーブしたい人なども正社員は誰でもこの制度の利用ができます。現状9名程度が活用しています。
育児短時間勤務制度は法令を上回る年齢(小学校卒業)まで取得可能としており、フレックスキャリア制度は期間の上限なく取得可能としています。社内では子育てスタッフ向けに、産育休の申請ができたり会社の制度がわかるような子育てポータルサイトの運営もしており、申請があれば社外からも閲覧可能です。
紙による社内広報誌の発行もしていて、子育てパパママ先輩社員の声や働き方など情報提供しています。

また、ウエディング業界はどうしても土日祝日の勤務が多いことから、時給2000円(子供二人の場合は2500円)のベビーシッター費用を会社が補助しています。
役職者として戻ってくるだとか、しっかりと経験を積みたいという社員にニーズがあります。
不妊治療や配偶者の転勤への帯同にともなう1年間の休職制度も導入しています。
【事務局】ニーズに合わせた様々な制度をしっかり運用されているだけでなく、子育てスタッフだけ特別扱いではなくどんな事情の社員も使えるという形なのがいいですね。その他、全社員対象の働き方や文化醸成に関わる取り組みはいかがですか?
A.【小高】
有給休暇の100%取得を義務化しています。また、3年勤務するごとに30日の有給リフレッシュ休暇を付与していたり、留学やボランティアにともなう1年間の休職制度の導入もしています。
弊社と業種が重複しなく公序良俗に反しないものであれば、どのくらい働く予定か確認のうえ副業ができる制度があるのですが、こちらもこれまでに58名が承認されました。ダンスインストラクターなど、かなり副業の幅は広いですね。
2014年に第1弾の「キラキラ働こう!プロジェクト」を立ち上げ、女性に限らずスタッフにヒアリングして、先ほどお話した育休取得期間の延長や子育てポータルサイト、役職者向けのサポートブックなどを導入しました。
今年2022年に第2弾をヒアリングし、以前より働きやすさや実際に働く人の実績というのは増えたと感じています。
直近3年間の産休・育休取得人数は男性14名、女性163名なのですが、男性の育休取得促進についても、ファミリーウィークという名称で育休取得の障壁をなくす、相談窓口の設置などに取り組んでいます。
男性スタッフ向けアンケートでは、収入面の不安や休めるのかなどの懸念の声がありました。そこで、給付金の情報や社会保険料が免除になるなどの試算をしっかりと提示してあげ、収入面の不安を取り除くようにしているほか、本人・上司にも対象となった際にはしっかりと育休制度についてご案内しています。
【事務局】着実に取り組みが実を結んできていますね。その他独自の取り組みもさまざまやってらっしゃるようですね。
A.【小高】
奨学金を返済している勤続年数が 5 年と 10 年の社員に、奨学金の返済資金として最大 200 万円を支給しています。
今年(2022 年)は 9 月末までに支給を終えており、制度開始からこれまでに、計 6 度(2017 年〜2022 年)、63 人に対して、合計約 5930 万円を支援しています。(200 万円の満額受給者は 3 人)。支給額にともない発生する所得税と社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険(40 歳以上対象))も各人に別途支給しており、社員の返済負担を可能な限りサポートしています。所得税および各種保険料の当社負担はこれまで計 1212 万円となっています。
また、当社らしいCSR活動も模索しており、強みである若さとコミュニケーション力をいかして児童養護施設にて児童と一緒に遊具を設置するという取り組みを導入しました。
親の疾患やDVなどの事情で養護施設にいる子どもたちの、周りの子と変わらない素直で頑張る姿にスタッフたちは元気をもらって帰ってきます。来年からは年2回実施予定ですね。

その他、競泳の池江璃花子選手のニュースがあったころから、スタッフから意見が出て骨髄の提供をする際に取得できるドナー休暇の導入もし、今年は1人取得しました。
LGBTQへの対応についても規程を整えました。もともとスタッフは差別意識もなく同じスタッフとして変わらず接するような人たちですが、結婚・出産祝い金や休暇制度なども、戸籍上の婚姻・子どもでなくても、事実婚やLGBTQの方にも適用するということを明確にした形です。
【事務局】社員にアンケートやヒアリングでしっかりと毎回声を吸い上げてつくりあげていかれていて、声もあげやすい風土がダイバーシティ推進にも効果となっているんでしょうね。
A.【小高】
経営者もこまめに店舗に出向いてスタッフと会話したり声を受け入れるような姿勢をもっていますし、スタッフから意見が言いやすい風通しのよさは強みだと思います。
【事務局】さまざまな取り組みが進んでいる御社ですが課題はあるのでしょうか?
A.【小高】
スタッフたちの年齢が上がってきて、将来の体力面の不安ですとか、お客様の世代と年齢が離れていくことへの不安を感じる者もでてきています。将来的な働き方の選択肢は検討していきたいですね。
【事務局】ダイバーシティや女性活躍推進を進めていくポイントは何だと感じますか?
A.【小高】
やはり会社のスタッフに対する考え方と本気度が伝わることではないでしょうか。
スタッフがいきいきしていないとお客様を幸せにできませんので、弊社はスタッフを尊重する風土・考え方を大切にしています。色んな角度からスタッフへの思いを社内発信していますし経営側も役職者に考えを伝えています。 それが結果的にスタッフが安心して働けることであり、仕組みがスムーズに導入しやすくなることへ繋がるのではないでしょうか。
自分だけで考えていると「こんな働き方はできないんじゃないか、難しいのではないか」と思ってしまうことがありますが、実際にできることっていろいろあります。グループワークで周囲の話をきくことで、「そんなやり方があるんだ」と気付きがたくさんあるスタッフは多いので、色んな人の話をきいて開ける道があるということを知ってほしいですね。
【事務局】長い年月をかけて徐々に進めてきた御社だからこそ説得力がありますね。模索する各企業へメッセージをお願いします。
A.【小高】
会社それぞれに合った取り組みがあると思います。スタッフの声を聞きながら、そして、スタッフに対する思いと本気度を伝えながら進めて、色々な選択肢を示し、実際に働く人が増えることで安心に繋げていけるのではないかと思っています。

プロフィール管理本部 総務人事部長
短大卒業後、天然ガス鉱業やIT系人材ビジネス企業において、労務管理や給与計算、人事制度の構築など、 一貫して人事業務を担当。
2005年ノバレーゼ入社。2006年のマザーズ上場では、中心メンバーとして上場準備に携わる。
同年、総務人事部ディビジョンマネージャーに就任、2015年より現職。
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